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TPPと『(株)貧困大国アメリカ』

 本書は堤未果の『貧困大国アメリカ』3部作の最後のもの。2013年6月に発刊された。タイトルに(株)とあるように、あらゆることが株式会社化されて行くアメリカを描く。

本書の目次を挙げて見よう。

第1章 株式会社奴隷農場

第2章 巨大な食品ピラミッド

第3章 GM種子で世界を支配する

第4章 切り売りされる公共サービス

第5章 政治とマスコミも買ってしまえ


TPPは関税率だけが焦点になっているが、それだけではなく、輸入される食品の質こそが問われるべきなのだ。秘密主義の結果、そうしたことは何も表に出て来ない。この本はアメリカの食べ物が、どれほどヤバイのか、大量の農薬と化学肥料を不可欠とするGM作物(その結果として土地の荒廃と人体へのダメージ)、本来草食の牛に肉の死骸を給餌して飼われている牛達(その結果の狂牛病)、極端に狭いゲージに詰め込まれた鶏への予防という名の大量の薬投与(その結果としての鶏インフル。野鳥のせいではない!)などという恐ろしい事実が検証されて行く。

そもそも動物達の飼い方が、動物虐待! 病気にならない方ががおかしい。

 

この本を読んだら、とてもじゃないが、アメリカ産のものはもはや食べものではないことが理解できる。はっきりしていることは農業の工業化、つまり株式会社化に碌な事はないということだ。

本書はこれらの事をオバマ政権と一緒になつて、隠蔽/無視するアメリカのモンサント社を始めとしたアグリビジネスの今を分析し、近未来の日本の姿を描く。

TPPの締結は日本の輸出自動車のアメリカの関税率ゼロと引き換えに、この口にしてはいけない食べ物とは言えない食べ物が大手を振って日本に輸入される! 事を意味する。

 

本書で見逃してはならない指摘はあらゆることが民営化=株式会社化していく事だ。刑務所の民営化、教育の民営化、究極は自治体の民営化=株式会社化である。財政危機に陥ったあらゆるところが民営化されて行く。惨事に便乗して株式会社が参入して行くという手法。別名、惨事便乗型資本主義=ショックドクトリン。タイトルにある株式会社とはまさにこの事を指している。 



by kyureki | 2014-04-21 15:35 | TPP